フードメディア・ディレクターの福田美佐子です。
焼肉も様々な進化を遂げて、各お店がオリジナリティを競う時代。
すでにけんしろう焼きなどで有名な「西麻布のけんしろう」の姉妹店として、新たな大人の秘密基地的な焼肉屋さんができたとのことで、お伺いしてきました。
お店の場所は新しいビルの1Fなのですが、入口が本当にわかりにくく、知る人ぞ知る隠れ家という雰囲気。
店内はけんしろうと同様、全て個室となっており、照明が暗めでムーディー。大人デートやちょっと特別な記念日などに良さそう。
まずは「シャンパーニュ・シャピュイ カルト・ノワール・ブリュット・トラディション」で乾杯。
お料理は月替わりのコースのみ。12月にお伺いしたので「December 20000円」をいただきました。
焼肉×フレンチをベースとしており、メニューを見ても何が出てくるかわからないところが、ワクワクしますね。
そして最初にお持ちいただいたのは、お料理前の美しいお肉たち。
とにかく美しいの一言です。これらがどんなお料理になるのか、期待が膨らみます。
a. シャトーブリアン × キャビア
シャトーブリアンは目の前で軽く炙ります。
そしてそこにスモークされたキャビアと謎のスポイトが!
キャビアはお肉の上に盛りつけます。
そしてスポイトはお肉に差し込んで完成。
チューブの中はなんと卵黄。お肉にかけて、そしてピンセットでいただくというこだわりよう。レアなお肉にスモーキーなキャビア、そして濃厚な卵黄と三位一体のハーモニー。
b. タン × フォアグラ
サラダに文旦、フォアグラテリーヌ、安納芋のガレットが盛りつけられたお皿が出てきました。
そしてタンはやはり目の前で焼いていただき、最後に盛りつけて完成。
お肉を引き立たせる文旦、そしてフォアグラの組み合わせが繊細なフレンチのニュアンスを感じますが、上質なタンの味わいはまさに焼肉ニュアンス。
そしてこちらのお皿にペアリングされたのが、なんとシャンパン(DRAPPIER)×カシス。
DRAPPIER単体でも美味しいのに、そこに大胆にカシスシロップを入れて、カクテル風にアレンジ。
最初はびっくりしましたが、合わせてみるとカシスの果実味がお料理とぴったりと合うんです。素晴らしいペアリング。
c. ザブトン × 缶詰
缶詰ってなんだろう?と思っていたら、本当に缶詰が出てきました。
開けてみるとそこにはザブトンとあん肝、白ワインビネガー、ポートワインのジュレ、かんずりの組み合わせたお料理が。
大人の宝箱のように、旨味と酸味と複雑味が缶の中で融合しており、蓋を開ける楽しみもあるというのがまたいい。
こちらに合わせたのはロワールのナチュールワイン「La Grapperie Desiree」。
葡萄はシュナン・ブラン。オレンジやナッツ、クミン、キャラメルの香りがあり、複雑な旨味がちょっと後を引く味で、あん肝のような個性が強い食材にも負けずに伴走するような感じ。日本酒が好きな方はこのワインお好きだと思う。
d. スネ × スモーク
けんしろう焼きでもおなじみのスモーク料理。
蓋を開けるとそこには大根?!
ボルシチをイメージしたということで、大根の中にスネ肉とビーツ、その上にサワークリームなど乗っており、最後にスモークの香りをつけて完成。大根は牛のお出汁で煮込んであるので、味のなじみがよく、全体に一体感も感じられます。
ペアリングは「ブラッディメアリー」風。
記憶がうる覚えですが、トマトではなくカンパリが入っていたような気がします。
e. ランプ × 王道
名前の通り、焼肉屋さんでの王道メニューが。山形県産但馬牛のランプをまずは焼いていただき、
サンチュに乗せていただきます。どこか安心しつつも、お肉自体の美味しさがダイレクトに伝わってきます。
ペアリングは「東方美人のウーロンハイ」。
口の中がさっぱりとしつつも、東方美人の余韻が心地いい。ワンランク上のウーロンハイ。
f. イチボ × サイフォン
次はかっこいいサイフォンを使ったお料理。
中には毛蟹のとディルが入っており、サイフォンを通してエキスを引き出すそう。
そして別皿にはイチボとウニ、そして蟹の剥き身が。
ここに先ほど抽出したお出汁をかけて完成。
食材全体に程よく温度が通り、スープの旨味にお肉の旨味やウニの旨味が混じり合い、旨味とコクと奥行きがパッと広がる感じ。ずっと味わっていたい、そんな気持ちにさえなります。
ペアリングはさっぱりと「ジンフィズ」。
北海道のクラフトジン「9148」を使ったもので、クリアな味わいとハーブの心地よさがありますね。
g. シャトーブリアン × ブリオッシュ
シャトーブリアンはレアなカツにし、それをほんのり甘めのブリオッシュで優しくサンド。
そこにさらに和牛のブレザオラ(生ハム)を削って載せるという贅沢さ。まさに最高級なカツサンドと言えるでしょう。
ペアリングはカルフォルニアのロゼ「Scholium Project Il Ciliegio The Stampede Vineyard California」。
葡萄はジンファンデルで、オーガニックスタイル。ベリーな果実味がありつつもしっかりとした骨格が極上のカツサンドを引き立ててくれます。
h. 牡蠣 × 昆布水
箸休めとして出てきたのがなんと牡蠣。昆布水の上品な旨味を追加し、見た目はエディブルフラワーで華やかに。
1つと言わずに3つくらいは食べたくなるほどのクオリティ。
i. ハラミ × 卵黄
塊のハラミは内蔵だなと思ったのですが、スライスされるとやはり美しいですね。
こちらを甘辛いタレで焼き、凍らせた卵黄と自然薯で月見を表現した器に乗せて完成。
ハラミのしっかりした味に黄身の濃厚さと自然薯の優しい旨味があい絡まって、味のバランスを構成しています。
j. サーロイン × 薪 × 炭
フレンチのコースでいえば、メインのお肉料理となるものでしょうか。
お皿が出てくる前に、自分が使いたいナイフを選びます。どれも個性があり素敵なナイフですが、第一印象でチョイス。
そして出てきたお肉はサーロインを2種類の焼き方での食べ比べ。
薪の方はしっとりとしており、薪のスモーキーな香りもついて奥深い印象。
炭の方は表面の香ばしさと凝縮した旨味が楽しめました。焼き方でこんなに印象が変わるのかと思うほどで、食べ比べだからできる贅沢。
ワインはピエモンテのバルベーラ「Barbera d’Alba 2015 Pozzo dell’Annunziata」。
熟した赤い果実の濃縮感にシルキーなタンニン、そして骨格の取れたバランスと軽やかながらも芯のあるワイン。
お肉にも最高な形で寄り添ってくれます。
k. タン × スパイス
スパイスと聞くとやはりカレーかな?と予想していましたが、一工夫と演出が加わります。
まずはチーズを温めてカレーの上にかけ、そこへなんと点火!ブルーの炎に包まれて完成。
スパイシーなカレーに柔らかいタン、そしてまろやかなチーズと最後までこだわり抜いた一品。
そしてカレーにもペアリングが。爽やかなラッシーを。
カレーのスパイスにはやはりラッシーが似合います。
l. カカオ × 温度差
デザートは温かいフォンダンショコラと冷たいベリーのジェラート。
温度差も楽しみつつ、味の王道のチョコとベリーの食べ合わせも楽しめます。
食後には紅茶と焼きたてのフィナンシェも。
怒涛のお肉コースをゆっくりと締めくくってくれました。
ここまでお料理とお酒をサーブしてくださったソムリエさんですが、実はマジシャンでもあるそう。
最後はなんとテーブルマジックのサービスも。
目の前で繰り広げられるトランプマジックは全くタネがわからず、大盛り上がり。
記念日などにもマジックなどで盛り上げてくれるのも可能とのことで、気になる方はご相談してみるのもいいかも。
メニューのキーワードを元にお料理を想像しながら、それを上回る演出と創造性にとても楽しめました。ドリンクのペアリングはバー的な要素もあり、ワイン以外のカクテルなどを合わせるのが秀逸でした。
「焼肉×フレンチ×ペアリング」の組み合わせでまさにここは大人の遊園地であり、大人の隠れ家。焼肉を超えたエンターテイメントなコースとホスピタリティに、新しい可能性を感じました。
記念日や焼肉の枠をこえたコースを楽しみたいときにオススメです!
追伸:
最後に手土産でいただいたカヌレ。焼き菓子も絶品なんですよね。お家でも美味しくいただきました。
USHIMITSU NISHIAZABU (焼肉 / 乃木坂駅、六本木駅)
夜総合点★★★★☆ 4.2