フードメディア・ディレクターの福田美佐子です。
六本木ミッドタウンから少し歩いたところに、イノベーティブなモダン中華がいただけるレストランがあるときき、お伺いしてきました。
地下のお店に入ると、おしゃれで明るいカウンターがあり、オープンキッチンとなっています。厨房は迫力のある中華の火力や手際の良いシェフの手元が全部見えるので、真剣勝負の様子を目の前で体感することができます。
お料理は「おまかせ 13000円コース」 にペアリング8000円を組み合わせました。ちなみにコース名はストーリ仕立で、五感を使ってイメージしてほしいとのこと。どんなお料理が出てくるのが楽しみです。
乾杯はシャンパーニュの「Bruno Paillard Première Cuvée」で。
ピノ・ノワール45%、シャルドネ33%、ピノ・ムニエ22%。柑橘類のニュアンスに白桃やはちみつ系ですが、辛口で余韻も心地よい。
Prologue.「馥郁 Creamy」
紹興酒に漬け込んだ白子とフルーツトマトが素材のそのものの美味しさから、より味わい深いものになっています。紹興酒の香りと味わいがかなり新鮮!
「漆黒 Crispy and Chewy」
熱々の石の上に、真っ黒な物体が。メニュー名のままの見た目ですが、中身が全く分かりません。
こちらは手にとってお皿に。一口かじると、サクッとした食感の中から餡に絡まったアヒルの卵や鶏肉、たけのこ、エビなど旨味がしっかりと詰まっております。あげ肉まんのようなそんなイメージ。温度といい旨味といい、これは美味しい。
ここで日本酒ペアリング「白鷹 特別純米 秋あがり」。
灘の伝統手法「生もと造り」で作ったお酒をひと夏の間熟成しているので、まろやかで円熟味のある味わいに。こういうお酒好き。
「暦 Property of the Oil」
こちらは軽く燻製された鯖をオレンジリキュールに漬け込んだもの。泡のソースにはカモミールや抹茶の要素が、粉末状になったラー油と、香りや辛味を自分の好みで組み合わせて複雑味を楽しみます。味の組み合わせのバランスが本当に絶妙で素晴らしい。
こちらには白ワイン「Kung Fu Girl Riesling」を。
アメリカワシントンのCharles Smith Winesが作るピュア系リースリング。マンダリン・オレンジや白桃、アプリコットの香りがオレンジリキュールと風味と帆走し、お料理の最後をすっきり爽やかに仕上げてくれる、そんな組み合わせ。
「殿雷 the Wafer sheet of Crispness」
最中に刻印したおしゃれなものが出てきました。中から鴨肉とフォアグラの濃厚な組み合わせに、時々口の中でパチパチと弾けるキャンディ。紹興酒の風味も相成り、素敵すぎるお酒のアテ。
こちらも白ワインで「Pinot Grigio Delle Venezie Colle Argento」
イタリア・ヴェネトのピノグリージョ、トロピカルな香りに、ミネラルとほどよい酸。軽めですが、骨格はしっかり目かな。
ここまでがプロローグ(前菜)なお料理たち。次からがメインのお料理たちです。
episode.1 「1分30秒 blink of Eye 大島 金目鯛」
名前の通り、1分30秒ほど火入れをした金目鯛に紹興酒とナンプラーそしてパクチーを乗せて。火入れ具合が抜群で生でも加熱した食感でもなく、でも滑らかな口当たりに魚の旨味が優しく凝縮されている感じ。
ここにペアリングしたのがなんとシェリー酒。「CREAM PX MARQUÉS DE POLEY」
ペドロ・ヒメネス100%、琥珀色でレーズンやイチジクのようなドライフルーツにはちみつ、スモーキーさも加わり、紹興酒にも近い味わい。紹興酒とは違うのはフルーツ系の余韻があるので、先ほどの火入れが繊細なお魚にすごく合うんです。このシェリー酒のペアリングに一番しびれました。
そして何やら目の前にコーヒーサイフォンが!上部には贅沢に金華ハムと松茸が入っています。お出汁を入れてじっくり時間をかけて香りと旨味をスープに移していくそう。
episode.2 「至極 One of the Best」
極上ふかひれ、金華ハム、松茸
先ほどのスープが出来上がったところで、黄金のフカヒレが目の前に。そこにスープを流し込んで「至極」のお料理が完成されます。
あまりにも美しいフカヒレは香港から取り寄せたもので下処理に1ヶ月ほどかけて、コラーゲン部分は全て取り除き、綺麗な透明な部分だけを使うという贅沢さ。余分なものを削ぎ落とした美しさに金華ハムと松茸のスープともう贅沢の極み。優しく高貴な味わいが素晴らしい一品。
episode.3 「草原 in top Gear」
土佐あかうし、ぽてち
お肉料理はシンプルにグリルのあかうし。ポテチはコンソメ味のような風味でもっと食べたくなる味。これだけちょっと中華っぽくないね、とシェフに行ったら自分のお料理ですとのこと。
お肉にはワインは赤を2種類。「Dom. de la Madone Beaujolais Villages Nouveau」
一般的なヌーヴォーとは違い醸造は通常のブルゴーニュ・スタイルのため、エキスが凝縮されタンニンも滑らか。自然派な作りで身体にすっとなじむ軽やかさと繊細さもあり、ゆるゆる飲んでいたいタイプ。
もう一本は「Gérard Bertrand Cigalus Rouge」
フランス・ラングドックのビオディナミな赤。葡萄はカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロー、シラー、カリニャン、カラドックの6種類のブレンド。黒色の果実の香りに、豊かな果実味に渋みやスパイシーさを感じられ、そしてバランスよい。スムーズなタンニンに余韻はミントの風味も。
episode.4 「強火 Stir-fry the Vegetable」
三陸帆立、黄韮
お肉の後にホタテなんですね。目の前のキッチンにある強力な火力の中華鍋でバッチリ火入れをして、黄ニラを合わせて。これはかなり中華な一品。こちらに合わせるのがなんとハイボール、それも強め!この組み合わせもグッときます。
肉厚なホタテの旨味と黄ニラの食感と風味をメインとしているので、あっさりしていますが印象の残る味わい。
「ROYAL LOCHNAGAR 12years」を使ったハイボールは、最初はほんのり甘く、そしてピリリと酸味が引き締め、最後にビャクダンの上品な香りと余韻があり、ワンランク上の味わい。
Epilogue. 「濃いめ Collagen soup noodles」
コラーゲンスープには鶏や鴨、フォアグラなど使いこってりと濃厚な味わいに。ヌードルはかなりの細麺で好みの太さ。付け合わせに一口ご飯。ウズラの卵にXO醤で小さな卵がけご飯ですね。
スープが残ってしまったので、追加で白米を入れてリゾットにしました。これがまた、ヌードルと違って美味しいんです。
Happiness 「Simple」
食後のスイーツは杏仁豆腐。キャラメル風味とエスプーマ仕立ての2種類。スムーズな口どけに上品な甘さ、杏仁豆腐の食べ比べが楽しめました。
デザートに合わせてソルティーヌも少々。「Lieutenant de Sigalas」
葡萄はセミヨン85%、ソーヴィニヨン・ブラン15%。ライムやグレープフルーツのフレッシュな香りに、オレンジの苦みとハチミツの混ざり合った風味と、とてもバランスが良く長く余韻に浸っていたい。杏仁豆腐とソーテルヌって合いますね。
最後は生チョコケーキとコーヒーで。クリスピー生地と甘すぎない上品なチョコがゆっくりと食事のランディングを導いてくれます。
こちらのお料理は食材は旬のものを丁寧に処理をして、火の使い方、調味料は中華ですが、新しいセンスある料理に仕上がっています。またペアリングのお酒もワイン、日本酒、シェリー酒、そしてハイボールまで、料理に合わせたものをベストな形で出してくれるのが楽しい。
シェフの人柄もよく、お料理の合間にカウンターのお客さんとのコミュニケーションも上手にされており、お料理のことも色々聞くことができました。
一緒に行った友人は海外のお友達をぜひ連れてきたいと行っていました。六本木という立地もあるので、海外からのお客様にもオススメ。シェフにはぜひ、世界を意識して羽ばたいて欲しいです。オープンして間もないようですが、人気になりそうな要素と雰囲気を持ち合わせていると思います。
これからが楽しみなモダンチャイニーズ、また季節を変えてお伺いしたいと思います。