フードメディア・ディレクターの福田美佐子です。
月島って私の中ではもんじゃ焼きしか思いつかないのですが、ちょっと面白いお店がオープンしたとのことでお伺いしてきました。こちらは甲殻類に特化した割烹料理店で、日本酒のペアリングを合わせてくれるとのこと。好みな感じです。
お店は元お寿司屋さんっぽいつくりで、カウンターは大将と近くていい感じ。お料理はお任せのコースのみ5800円、それに日本酒のペアリングを1500円でつけることができます。
とりあえずの「境港のずわい蟹 一杯」。最初から蟹が出てきました!それにしても甲殻類の顔ってカッコいい。この子はちょっとガンをつけてヤンキーっぽいかな。
つづいて、珍味の盛り合わせ。かわいい箱に入ってきました。「播磨灘産 活渡蟹の塩辛」「蟹 カステラ」「鳥取 白バイ貝の煮付け」「釧路昆布産 ツブ貝のチャンジャ」。こちらはお料理の合間にちょこちょこと頂きます。
最初の蟹と珍味とのマリアージュは2種の日本酒から選べます。天明と天吹だったのですが、「佐賀 天吹 純米吟醸 いちご酵母」をチョイス。天吹はいろいろな花の酵母でお酒を作っていてとても面白いのですが、今回のいちご酵母は甘く爽やかな香りに、軽快な飲みくち、甘味とコクの膨らみ、きれいな酸がジューシーで美味い。
ここからのお料理名はなぞなぞなのです。お品書きからは何がでるかさっぱりなのですが、説明をお聞きすると「おお!」となります。
先付けは「ハットと杖が似合う歳」。
答えはこちら。軽くボイルした牡蠣に、ジョニーウォーカーに漬け込んだイクラと、燻製したいぶりがっこを合わせていただきます。燻製の香りとウイスキーの香りとコクが牡蠣との組み合あわせることで、より深みと旨味を感じることができます。ジョニーウォーカーのキャラクターのハットと杖から名前はきてるようですね。面白い!
マリアージュの日本酒は「富山 林 純米吟醸」。「黒部峡」を主力銘柄とする林酒造場の20代の息子さんが納得したものにつけて出しているのはこの「林」とのこと。香は熟したメロンで、口に含むと甘みと旨味がぎゅっとしており、キレもよい。甘みはあるけど、お料理に合わせやすいいいお酒。お酒のチョイス、とってもいい!
お凌ぎは「祝海と畑」。祝海で「めでたい」から「金目鯛」、畑は金目鯛の下にあるお野菜たち。ふふふ、楽しいですね。脂の乗った鯛と人参、大根のお野菜に中からトマトのソースが。イタリアン的な前菜といった雰囲気です。
お凌ぎとのマリアージュは「富山 幻の瀧 純米吟醸」。きれいな水のクリアさを感じる柔らかな味わい。のどごしもよく、スッキリ系の純米吟醸です。
椀物は「海老噌浮」。答えを聞くと「えびぞう」と読むそうです。茶碗蒸しに海老味噌などを使ったソース、そして飾りに手長海老と海老づくし。海老味噌のコク、茶碗蒸しの濃厚さ、海老の美味さが三味一体のお椀ですね。
お椀に合わせるのが「新潟 鶴齢 純米吟醸」。鶴齢は定番的に好き!ほのかな香りと優しいふくらみのある旨味があきることなく、またお料理を引き立ててくれる食中酒。海老味噌の個性を全面にバックアップしている感じかな。
揚物は「伊を得た魚」。イタリアン要素があるのかなと予想していたのですが、わかさぎをイタリアのデュラムセモリナ粉をつけて揚げたということで、「伊を得た魚」とのこと。緑のソースには西京味噌が入っていて、和洋折衷な味わいでした。
揚物とのマリアージュは「福井 九頭龍 純米」。コンセプトは「日々に寄り添える地酒」とのことで、とにかくほっとするお酒。香りは穏やかでメロンや洋梨、口当たりは軽快でスムーズ、味わいはとっても上品。
煮物は「パク壷」。パクチーを壷にみたてて、中から柔らかく煮込んだたこが!たこつぼ的な楽しいイメージ。さっぱりと爽やかなパクチーとたこの組み合わせって合うんですね。
そして写真を取り忘れましたが、煮物の日本酒は3種選ぶことができ、ぬる燗で。私は「京都 まつもと 純米 ぬる燗」に。まつもとはいつもは冷酒でいただくのですが、ぬる燗にすると印象が変わって、まろやかでほっこりしてこれもいいかも。新たな発見です!
焼物は「木木木」。答えは木が3つで「杉」。杉板で本ズワイガニを焼き、風味をつけたものに牛肉、雲丹を巻くという贅沢な一品。牛肉と雲丹の濃厚さと蟹の旨味がやみつきになりそう。
お酒は「兵庫 白鹿超辛 燗酒」。白鹿って昔からよく聞く名前ですが、意外とちゃんと飲んだことがなかったです。熱燗でいただきましたが、まろやかですっと身体になじむ感じ美味い!主に日本酒は冷酒ばかりでしたが、熱燗もいろいろ飲んでみたくなりました。
〆の食事は釜飯 又は 手打ち蕎麦から選べます。私はホタテの釜飯をいただきました。ご飯と一緒に赤出汁味噌汁(蟹のあら入り)、自家製浅漬けもついてきます。大きなホタテが花を咲かせたような形で出てきました。優しいお出汁に生姜のアクセントでさっぱりといただけます。
甲殻類ばかりということで、蟹ばかりでてくるのかと思いきや、工夫を凝らしたお料理のコースはとても楽しかったです。ペアリングの日本酒はどれもセンスがよく、おちょこで1杯強づつですがいろいろ飲み比べができるのでいいですね。ちなみに日本酒が苦手な方には日本ワインが充実しているので、ワインを合わせてもいいかもしれません。
20時以降は深夜定食2600円というのもあるそうで、お通しの蟹に手巻き寿司がいただけるとのこと。仕事が遅くなって1人で食事をしたいときにオススメかな。日本酒のセンスがよく、楽しいコースでまたお友達を誘ってきたくなるそんなお店でした。