フードメディアディレクターの福田美佐子です。
近頃下北沢に新しく個性的なお店が増えてきて、お伺いしたいリストは増えるばかり。そんな一つに下北沢と三軒茶屋の間にあるお店がすっごく気になっていて、女友達3人とお伺いしてきました。
場所は下北沢から歩いて10分くらい、一番行きやすのは渋谷からのバスとのこと。お店の外観は雑貨屋さんのような風貌で、店内に入るとアンティークの自転車などが飾っていてとっても個性的。
ちなみにこちら森枝シェフは世界的に有名なシドニーの 「Tetsuya’s」 やミシュラン二つ星の「湖月」マンダリンオリエンタルの「タパス・モラキュラーバー」とかなりの面白い経歴なのです。そしてまだ20代後半というのに驚き!
お料理はコース3種類のみ、ボリュームによって調整してくださいます。とりあえず3800円の真ん中のコースを注文しました。お料理に合わせてお酒も5種類3000円で合わせていただけるというので、私だけお酒もお願いしました。
乾杯のお酒はイタリア・ロンバルディアのスパークリング「フランチャコルタ・ブリュット・エモツィオーネ・ミレジマート ヴィッラ」。葡萄はシャルドネ80%、ピノ・ビアンコ10%、ピノ・ネーロ10%。自社畑100%、ビオロジックの栽培というビオワインでもありますね。きめ細かい泡立ちに、土地の葡萄の旨味がしっかりと感じられます。1杯目からなかなか素敵なチョイスです。
お料理の1品目は「うずらの卵入り鹿肉のクロケット」。ダチョウの卵だという器に、かざりのひよこ豆、その上にちょこんとクロケットがのっています。ビーツを使った酸味のあるソースでいただくと、鹿肉のぎゅっとした旨味に半熟のうずらの卵がまったりと融合して、小さいけど存在感は十分です。
2品目は「生牡蠣&平貝のマリネ」。オイスターには生姜のドレッシングでふんわり味がついています。平貝のマリネには山椒菜などで味にメリハリがあり、非常に美味。
こちらの料理に合わせてでてきたのが日本酒!神奈川の蔵元の限定酒「いづみ橋 黒蜻蛉 生酛仕込み 春生(はるき)おりがらみ」。ほんのりと甘味の余韻が楽しめるおりがらみ系は個人的に大好き。爽やかな辛口の中にもほんのりとした甘味。貝類にぴったりと合います。
こちらも日本酒に合わせてくれたのか、箸休め的な「鯖の麹のマリネ」。臭みはないのですが、好き嫌いが分かれるところ。お酒が無いとちょっときついかもしれません。
そして「カリフラワーのサラダ」。生のカリフラワーに苺やモッツァレラチーズ、味のアクセントに生胡椒が入っています。カリフラワーって生で食べると美味しいんですね。カリカリの食感と果物の酸味と甘味、そして胡椒のプチッとした口当たりがうまく融合して、個性的でありつつも安心していただける一品。
そんなサラダに合わせてくれたのが、オーストリアの辛口白ワインの「フレッド・ロイマー・ロイス」。土着品種のグリューナー・ヴェルトリーナー100%を使ったワインで、別名「緑のワイン」ともいわれているそう。爽やかな風が吹き抜けたようなフレッシュなミネラル感で、飲み心地がすごくいい。先ほどのカリフラワーとすごく合う!!
つづいて「柑橘類のサラダ」。ブラッドオレンジや文旦、みかんなどを色とりどりに合わせたサラダでこちらも爽やかな一品。先ほどの緑のワインは柑橘との相性も抜群で、本当にお酒とのマリアージュセンスはかなりいいです。
「半熟卵と鶏ハムのサラダ」。鶏ハムにアスパラ、人参などに半熟卵とブルーチーズ、そしてアボガドオイルで風味をつけています。半熟卵はすべての味を卵の味にしてしまうのであまり好きではないのですが、それに負けないくらいの鶏ハムの旨味と強めブルーチーズを組み合わせているのが、よく考えていると思います。まったりしつつ、重くならない絶妙なバランス感覚。
そして次の料理はカジュアルに「カレイのフィッシュ&チップス」が出てきました。スライスされた里芋とジャガイモは一度干して寝かせたものを揚げているとのこと。味付けはホタテのパウダーともう一つ何かのパウダーを組み合わせおり、サクサクでウマウマ。
こちらに合わせてお酒はクラフトビールの「ブリュードッグ」。急にアメリアンナイズな組み合わせ。でもやっぱり合いますね。(笑)
そして一緒にいった友人が一番楽しみにしていた「キウイとハーブのサラダ」。キウイをくりぬいた中には、パクチーや木の芽などのハーブに先ほども使っていた生胡椒でアクセントを加えます。一番驚いたのが「皮ごといただける」こと。皮が気にならないほどの、キウイのジューシーさとハーブの爽やかさが心地よい秀逸な一品。
「地鶏のグリル」は2種類の部位の食べ比べ。見た目は普通っぽいのですが、ジューシーでふっくらした仕上がりと鶏肉の中に巻かれた野菜が味のアクセントになり、かなりの美味。普通っぽい料理と思わせつつ、確かな料理技術とセンスに改めて驚きます。
そしえお酒はイタリアピエモンテの赤「バルベーラ・ダスティ・スペリオーレ・テッラ・デル・ノーチェ 2004 トリンケーロ」。バルベーラ100%の自然派ワインです。このワイン、一口飲んだら思わず「旨い!」といってしまうほど、素晴らしい!お料理と合わせてもいいのですが、このままワインだけでじっくりと味わいたいほど。とにかくアルコールのセンスも素敵すきます。
ワインの余韻にひたりつつ、デザートもでてきました。ヨーグルトと何かのムース。この頃には少し酔っていたので、記憶が曖昧ですが、飲んだ後にもすっと体になじむような優しさがいいですね。
そして食後酒もでてきました。最初シェフからラベルを隠して「これは何でしょう?」とクイズ風に聞かれました。
口に含むとメイプルシロップのようなバニラ風味のまろやかで軽やかな甘さが心地いい。デザートワイン?と返したところ、答えは何と「味醂(みりん)」。これはかなりの驚きです。元々江戸時代あたりはお酒の味が苦手な人が、甘く飲みやすい味醂を飲んでいたようです。
米麹の優しい甘さにまろやかな旨味が心地よく、自宅でも試してみたくなりました。
そして最後は丁寧にコーヒーを入れていただきました。やっぱりコーヒで締めるとほっとします。
この日のカウンターは女性ばかりで、シェフが料理を作る様子を楽しそうに眺めつつ、会話が行き交っておりました。シェフのコミュニケーション能力が非常に高く、女性たちの質問などにも上手に答えていたところが印象的でした。
お料理はすごくカジュアルなものばかりですが、どれも一手間一工夫を加えており、いただくとどれもちょっとした驚きがあるのが、すごく楽しかったです。その驚きのある料理に合わせてのお酒のマリアージュが本当にセンスよく、かなり好みでした。
もちろん、お酒を飲まなくてもいいのですが、こちらは絶対にお酒を合わせていただいたほうが楽しめると思います。
店内はちょっとしたガレージのような印象で高級レストランのような雰囲気ではなりませんが、個性的でおいしい料理とお酒を自由に楽しめる空間としては納得です。どちらかというと、ちょっと食べ慣れた人や飲み慣れた人が少人数で気軽に利用するのがぴったりのような気がします。
あの型にはまらない自由でセンス溢れるお料理とお酒のマリアージュを求めて、また近々再訪したいですね。
夜総合点★★★☆☆ 3.8